
~底なしの淵で、テレキャス占い師が光のコードを奏でるとき~
ナディア☆創作専用2026年7月21日 noteの原文

☆今回の登場人物
星野高志 51才 サポートミュージシャン兼タクシー乗務員
星野七海 50才 高志の妻、かつてのバンド仲間、現在病院勤務・看護部長
星野ヒカリ17才 高志の兄・聖也の娘。
聖也亡き後、高志と七海がヒカリを引き取るまでの間に、高志の依存症がどうはじまり、進行していったのか?
AIによれば、依存症は心の闇ではなく、一時的な脳の制御不能であるとのこと。あなたは、どう思いますか?
七海、魂のロール発見
たとえば、実際に医師や看護師など病院関係者は、案外と、自分やその家族のケアについては、仕事でやるようにとはうまくいかないケースがままあるもの。
七海は、高志の異変には気づいており、もちろん病院は勧めた。
がしかし、当の本人が「治りたくない」のが、この手の病のやっかいなところだ。
たいてい、死にぞこなって首に縄をつけて引っ張っていかれるまで、やめられないのが依存症。
酒やゲーム、セックスにチョコレート……一昔前のNYでは、週末過食嘔吐が大流行りだった。
人知れず、隠れて、苦しみのたうち回り依存し続け、「生き地獄」を味わいながら、今日も一般人の顔で出社帰宅。そんな層がこの世の中にはまだまだ、実際あふれている。
七海は、高志のコンプレックスや過去はある程度聞かされていた。
サポートミュージシャン兼タクシーの乗務員という不安定な収入では、七海の経済力に頼らざるを得ない高志の、プライドを逆なでするような発言をしてしまったこともあった。
そんな時には、苦笑いをして肩をすくめるのが高志の常。
基本、おだやかな、人好きのする、争いごとを好まぬ彼だった。
かけ事については、大学時代から、少しやっていたと、しばしば高志の話題にのぼっていた。
「兄貴は、ぜんぜんやらなかったけどね」
ふと、引き合いに出された兄、それが高志の実兄、聖也であり、ヒカリの亡き父親だった。
高志より2才年上の兄・聖也は、生前は代表曲があって、インディーズレーベルの多少知られたボーカル&ギタリストだった。
「俺とことごとく違う、ギャンブルはきらいというタイプだったよ」
高志の兄の聖也がインディーズの世界を拠点としたのに対して、高志はずっとメジャーレーベルでバックバンドの仕事に徹してきた。
インディーズの頂点に立ったことがある聖也より、名もないバックバンドでもステージやTVでの露出は多いと、「自分のほうが上だ」と、高志はよく言っていた——非常なコンプレックスを感じた七海だった。
「兄貴はいつも、長男特有の『母親のお気に入り』ポジション」
常々高志が言うことでもあった。
聖也が結婚して子供(ヒカリ)が生まれて以来、益々、母親からの溺愛ぶりは加速したという。
その母親が永眠するまでの間、高志はほとんど、母親に会いにいくことはなかった。
「世間じゃ、俺らみたいのを『親を放ったらかし』だとやゆするが、
そこだけ切り取るなっての」
それが、嫁姑問題が上がるときの、高志の口ぐせだった。
だいたい、母親から愛されたなんて記憶は俺にはまるでない。
母親ってものが何なのかなんて、考えたくもない。
そうもよく言っていた。
「家に行くと、出される料理、やたら中華が多いだろ? あれ、兄貴が好きなだけだから」
高志と七海との間に子供はなく、実家を訪れても、兄夫婦のように大事にされることはなかった。
そんな、積み重なった空虚な日常の果てだった。
高志が非番のとある日、麻雀の欠員メンバーの代行役に駆り出されたときに、面白半分に勧められたオンラインカジノの一回が、だんだん大きな穴になり、やがては、底なし沼へと化していったのは。
「勝てば一発逆転」という幻想と、「負け追い」の連鎖がはじまった。
「さらに大きく賭けて取り戻そう」と、雪だるま式に掛け金はエスカレートしていった。
そこに飛び込んできた、聖也急死の訃報。
ひとり娘のヒカリちゃん……まだ中学生だというのに、可哀そうに。
施設に行くのか——ふと七海は真顔になった。
葬儀の喧騒が去った夜。
リビングのソファで、琥珀色のグラスを握る高志の真横に、七海は座った。
「高志、話があります」
七海は、逃げ場を塞ぐように、高志のかをのぞきこんで言った。
「最後まで、聞いてください」
ついに、潮時ですかと、高志はグラスを置き、自嘲的に肩をすくめた——離婚届けを出すには、ちょうどよい時分かもしれない。
「ヒカリちゃんを、私たちの家に呼びましょう。聖也さんの娘さんを、ちゃんと育てて社会に送り出す、それが今私たちに与えられた役割だと、私は思うの」
高志は、ただ七海の瞳を見つめ返した。
その瞳には、憎悪、嫉妬、挫折感、すべてを見通した上での深い慈しみがあった。
「ごめん……」
絞り出すような高志の声に、七海は表情を悲痛にゆがませ、高志の震える手をごつごつとした自分のほっそりとした両の手で包み込んだ。
「私のほうこそ、ごめん。ずっと、あなたの話は耳に入れてきた。でも……あなたの心の叫びを、私は聴こうとしていなかった。孤独にさせていたのは、私だったんだね」
そのことばが、高志のなかで張り詰めていた最後の糸を切った。
「……っ!」 高志は子供のように泣き崩れた——何十年も耐え続けてきた「愛されなかった子ども」のように。
七海が高志の肩に腕を回し、その震えをすべて受け止めるように抱きしめると、高志はおぼれる者がわらを掴むように、七海を抱き寄せ、激しく肩を揺らした。
二人はたがいの体温を確かめ合うように、静かに、しかし強く、魂を重ね合わせた。
「きっとこれは、私たち2人の問題。一緒に、乗り越えよう」
翌日、朝一番で、高志はヒカリの携帯に電話をしていた。
「ヒカリちゃんさえよければ、叔父さんたちといっしょに暮らさないか?」
ヒカリの回想とRayのテレキャス占い
「叔父さんは優しいけど、時々怖い目をする」
「父の話が出ると、黙りこくることがある」
いつもではないが——と、ヒカリなりに学習していたことをRayに話すのだった。
「七海さんが、『お兄さん(亡き父)のギターは、まさに観衆を泣かせるタイプ』と話しだしたことがあったが、高志叔父さんの
顔色が変わったことがあったの」
「そうだったんだね……」
Rayは、ヒカリの表情をしっかり銀の瞳にとらえながら、テレキャスターを爪弾いた。🎵Am - Em7
「高志叔父さんは、内面に影と歪みを抱えている……七海叔母さんは、夫の複雑さを優しく包み込んでいる」
そこでRayは目を伏せ、Em7のオープンコード を、低音弦から順にアルペジオで弾いた。
「時々その影が……エラーのように顔をのぞかせることもある……でも、七海さんの光が、きっと全部を包んでくれる」
🎵Fmaj7 - C/E - Gsus4
「そして、あの夜の出来事があったの」
歪む境界線――七海の不在、忍び寄る影
七海さんが、当直で家にいない夜、学校から帰宅したヒカリを、玄関で迎えたのは高志だった。
グラス片手に、相当酔いが回っているようだ——酒の匂いに、ヒカリは思わず息を止めた。
「ヒカリ……こんな時間まで、どうしてた?」
声は優しさを帯びながらも、聞き取れないほど低く、目が充血している。
「こっちはまた、キャンセルだ」
ウイスキーをあおりながら、高志は愚痴をこぼし続ける。
「七海の奴、そうなると思った だって……チっ」
リビングのテーブルには、ウイスキーのボトルの他に、いくつもの潰れたビールやチューハイのアルミ缶が散乱し、さっきまで七海と話していたのだろうスマホが、投げ出されていた。
ヒカリは、父の面影が重なる存在が近くにいることに、悪い気がせず、曖昧にうなずいていた。
グラスに残っていた最後の一口をあおって、ふゥっと息を吐く高志。
その視線が、いつもより少し長く、ヒカリの顔に留まる。首筋や、ゆるく開いた制服の襟元に、ちらりと落ちる。
「ヒカリは……お父さんに、似てるのかな?」
低い声でそう言って、叔父は手を伸ばした。
頭をなでるはずのその手が、背中にまわり、ゆっくりと腰に落ちていく。
ヒカリは、動けなかった。「叔父さん……?」
時計の秒針の音だけが、大きく響きわたっていた。
つづく


「食」「アルコールや薬物」「身体と欲望」そういったご相談を、星とカードで読み解くという行為そのものが、いかに症状の緩和に役立つかということを、お伝えしてまいりますね。
私たちの占術の世界は、癒しと叡智が共存している、医療ではないしスピ系でもない、新しいニュートラルな世界かもしれませんね。 読者の皆様も、よければここで、依存症の「回復とは何か」や「依存と創造性の関係」など、さらに掘り下げてみませんか?
肩ひじ張らず、お茶でもいただきながら。。古来、人は生活の節目節目で、同じ気持ちを共有できる人たちと酌み交わしてきました。ひとりでも、気持ちを切り替えようと、一杯の水を飲み干すことが、ありませんか?
できることなら、心許せる人たちとたまには会って、ささやかな飲み交わしの会を・・・開催するのも意識が求める大切なリチュアルかもしれませんね。


