12星座詳細その5 獅子座・獅子宮(ししきゅう)
獅子というシンボル
先回、水辺の生き物が登場し、陸海空を統治する3種の生き物と人間が出そろいました。ここでまで肉食獣に戻り、獅子の登場です。獅子は、古今東西で百獣の王という地位を獲得した最強の生き物、王者、王権の象徴でした。力において人間を超越した聖なる存在として崇められ、古代エジプトにおいては、王の墓ピラミッドの前にスフィンクスの像を建て、その神的パワーの恩恵に授かろうとしてきたのです。
左) ギザの大スフィンクス 右)カフラー王の大スフィンクス
スフィンクス もしくはスピンクス(Sphinx)は、タロットではおなじみのシンボルですね。スタンダードなタロットでは第七のアルカナにスフィンクスが、また第八か第十一のアルカナには「堅忍」の象徴札としてその絵柄に獅子が登場しています。
マズル・コントロールがテーマとなるウェイト版。動物の親が子どもの口を噛んで社会性や強弱関係を教えるところを人間の手で行い噛み癖がある犬をしつける時に使わせる手法ですね。
あなたのワンちゃんがマズル(口先)を触らせないのは、あなたに常にマウントしようとしていることの表れ。いきなりこれを犬の前に行ってやろうとすると噛まれる危険がありますからね(>筆者経験済み)、まずワンちゃんの後ろに立つ。首前あたりをそっとなでなでしながら、そのまま手を口元に移動させて口を抑えましょう。マウント傾向強いとがぜんいやがります。最初は数秒、だんだん長くして一定時間(トレーナーさんのお勧めで)口を抑えたまま軽く動かせるようになると、従順性が育つようになり、反抗して噛んでくることもなくなってきます。
飼い主としてはしつけで支配性を見せるわけですが、犬がそれを「攻撃」ととってしまうことで噛みに出てくるわけです。犬が進んで従おう!と思ってくれるような飼い主さんになる近道みたいなものですね。
余談ですが、初期のマルセイユ版には純粋に戦闘車を引く「馬」が描かれていました。上)下段右端がフランス国立図書館のノブレ版の「戦車」。エリファス・レヴィ (1810 - 1875 wikipedia)の影響を受けているとも言われています。
スピンクスは、エジプトに発祥した神話上の生き物、架空の聖獣です。クフ王のピラミッドの前に、守護神として奉られているカフラー王の頭と獅子の胴体を持ったスピンクスなどが有名でしょう。古代エジプトにおいて、人々は、既に人間に勝る力をそれぞれの生き物に見出し、神的対象として崇め奉る慣習がありました。百獣の王の異名を持つ獅子、雄々しいたてがみをなびかせる獰猛な生き物を、王家の紋章や守護神に相応しいものとして取り入れたエジプト人たちの感覚は、現代に生きる私達の中にも備わるものといえるでしょう。(以上 タロット象徴事典より)
獅子は世界の至る所で人々が畏怖し崇める一者の神、太陽神とも結びつけられるようにもなりました。
下)現存する最古のタロットヴィスコンティ版の「力」。イエール大学蔵
右)イタリアILMeneghelloの復刻タロット
「堅忍」という美徳の擬人像が描かれています。
大変美しい黄金のたてがみの獅子が見られますが、獅子は猛威を振るう存在ではなく、王冠をかぶった女王か王妃にマズル・コントロールされているのか、サムソンにちなんだ構図として描かれたものなのかは不明。
サムソン:旧約聖書の士師記に登場する怪力。wikipedhia
太陽=一者の神と同様に、古来、獅子は羨望の対象でした。
獅子座もスポットライトを一身に浴びることを好みますが、たった一つの主役の座ばかりをねらって、脇役をきらうため、実際にステージに立つ回数は意外に少なくなります。また、王者のプライドが邪魔をして、人づきあいもこじんまりとしがちで、意外と華やかなシーンから遠ざかり、孤高の存在と化す獅子座さんも多いものです。
協調性に乏しく、尊敬する上司でなければ従えませんから、組織に入るより自営業が向いているとされています。階級意識が強いので上下関係にはうるさく、自分の配下の面倒見はよく、親分肌を発揮するのが特徴です。
全身に熱き血潮が脈打ちながらも、王者の誇りと不屈の精神でちょっとのことでは動じず、どっしり構えているのが獅子座の特徴。黄道12宮上、第5室が獅子座の定位置です。個人の「娯楽の部屋」とされています。獅子座は、人生をエンジョイし、あくせく働くだけで終わらせまいとします。ゆったりとした心地良さを追求し、ラグジュアリーに暮らすことを好むのです。華やかなパーティーや観劇を好み、ギャンブルに興じることもあるでしょう。高級品、ブランド品を好んで身につけ、生活感のあるものやチープなものを好みません。日常的には、豪華一点主義的な傾向としても出るでしょう。
天真爛漫さの象徴でもある太陽が司る獅子座は、永遠の少年/少女だったり、いつまでも「青さ」が消えない傾向があります。どこか子どもっぽく、甘えた印象を引きずるところがあります。
権威、権力に魅力を感じ、肩書きに一目置くようなところがあります。伝統があったり、ネームバリューの高い大企業に身を置き、尊敬する上司の下で、忠誠を尽くすというケースもあるでしょう。
獅子宮を定位置とする獅子座と蟹座の守護星のお話
獅子座の部屋は黄道12宮を表すホロスコープの 五番目の宮、第5室です。
ここでちょっと前回の蟹座の話にもどらせて下さい。蟹座のハウスと守護星をおさらいしましょう。
西洋占星術はギリシア・ローマで成熟したものではございますが、最重要事項のライツ/Lights=太陽と月、このいわゆる西洋占星術的二大惑星の立ち位置。
ここから、主要惑星の守護星が決まることになります。
赤丸の左右を順番に見ていきましょう。
チャートの赤丸
向かって左)惑星と守護星
双児宮-水星
金牛宮-金星
白羊宮-火星
双魚宮-木星
宝瓶宮-土星
向かって右)
処女宮-水星
天秤宮-金星
天蠍宮ー火星 ー ただ今は「冥王星」
人馬宮-木星 ー ただ今は 天王星
守護星:太陽
【 太陽 ☉ 】人間の天性と生命と活力、肉体的なエネルギー、第5室を司る。
獅子座の守護星:一個の人間、唯一神、男性原理の象徴。
キーワード:太陽、王権、黄金、幸せ、吉事、公共、赤子、友愛、家庭
太陽は、地球からの見かけ上の動きとして、およそ365日、12ヶ月で天球図・12宮を一周します。ちょうど1ヶ月程度、28~31日でひとつの宮を移動することになり、これをすなわち、太陽の公転周期は365日であるということになります。この周期が古代の一太陽年であり、一年を測る尺度として用いられていました。
太陽は実際には自ら光を発する恒星ですが、占星学的には太陽系を構成する主要十惑星のひとつとしてとらえられています。そして、第5室「獅子宮」を統治する支配惑星、或いは守護星とも呼ばれるもの。夜空の獅子座を構成する中に恒星レグルスという星があります。黄道上の唯一の1等星で航海位置の計測の基準となる常用恒星。古代エジプトでは、太陽がレグルス付近に来る時期に、即ち7月下旬から8月の中旬まで、エジプトのナイル川の増水と激しい氾濫が起こることから、人々はこの時期に「獰猛な獅子」のエネルギーを見出したのです。レグルスは獅子座の心臓と見なされ、エジプト人たちによって崇拝され、太陽と獅子は関連性を見出されたのでした。
太陽は、地球上の私達にとっても、また、他の惑星にとっても太陽は中心的な役割を担っており、太陽の周りを運行する惑星で太陽系が構成されていることは周知のこと。太陽の熱と光が、万物の命の源であり、新たな生命の誕生、一個の命、人間の個性、バイタリティを象徴するものとなりました。
ギリシア神話ではヘリオス、ローマ神話ではソル、アポロンという太陽神が登場します。特に、アポロンは、そのアトリビュート(付帯物)である月桂樹の王冠が、現在でもオリンピックの勝利者に捧げられているように勝利の神として絶対的な地位を誇っています。医学、音楽をも司る万能神であるが、それは絶対神ゼウスの摘出の子という生まれながらのサラブレッドにして当然のこと。黄金の馬車を乗り回し、永遠の若さと戦いに優れている一方、心温かくもあり、明るく軽快な性格で、最も人間から愛された存在でした。
天球図の解釈においても、最も影響力の強い重要な惑星として扱われます。この太陽のみで占断しているのが、よくある一般的な「星占い」「12星座占星術」、テレビや雑誌の「毎日の占い」です。各自の太陽が入宮しているサインにより運勢傾向を見ます。太陽は、ホロスコープ上の春分点をスタートとして右回りに移動し、ひとつの宮を30日かけて、12のサインを12ヶ月をかけて通過してゆきます。あなたがこの世で産声を上げた時、太陽がどこの宮を通過していたか?というのが、12星座占いなのです。
正負の側面
正:活力、勇気、成功、支配、名誉、寛大、権力、強い意志、指導、自信、高級
負:尊大、横暴、独断、贅沢、見栄、おだてに弱い、調子が良い、自慢、不用心
象徴的な人物:男性、父親、夫、権力者、地位のある人、エリート、勝負師、政治家
太陽神ヘリオス:アルテミス/Artemis 、もしくはダイアナ/
Diana
蟹座の守護神は、ギリシア神話におけるアルテミスArtemis。絶対神ゼウスと大地の女神レトの娘、太陽神アポロンの双子の妹(異母兄妹説も有)にして、月を司る彼女は、女性の緒力、神秘の力によって、その潮の流れ、満ち欠けを操ることが許されていました。よって全人類の生みの親である母親、こと処女の守り神としてあがめられてきた存在です。
アルテミスの処女性にまつわるひとつのエピソードが若者アクタイオーンに対する仕打ちです。
ある日、アルテミスがお付きのニンフ達を引き連れ、美しい泉がわき上がる谷間で水浴びをしようとしていたところ、狩りの最中にひと休みしようと立ち寄ったカドモス国の王子・アクタイオーンがその場へふらりと入り込んで来てしまったのです。反射的に弓矢を探したアルテミスでしたが、側にないことを知ると、とっさにアクタイオーンに水を浴びせて「私の裸を見たと吹聴できるものならやってごらん!」と叫ぶのでした。すると、アクタイオーンはみるみる内に牡鹿の姿に変わってしまったのです。そこへ、アクタイオーンの狩猟犬が彼をかぎつけてやってきて、皮肉にも彼は自分の飼い犬たちに八つ裂きにされてしまったのでした。
参考:角川文庫「ギリシア・ローマ神話」トマス・ブルフィンチ著、大久保博訳
アルテミスの冷淡を通り越した残虐性に、なんて無情な神様なのだろうとあなたは思ってしまうかもしれませんね。
がしかし、彼女はオリュンポスの美しい女王であり続けました。彼女は人間よりもむしろ野性動物の守護神だったのです。野山に住むあらゆる獣たちを守る存在でもあり、それ故狩猟についての責任を負う立場にある者として無用な殺傷をすることはありませんでした。双子の兄、太陽神のアポロン同様、狩りの腕はオリュンポスでは一二を争うと言われたアルテミスでしたが、奔放に狩猟を楽しんだアポロンとは対照的です。
人間の女性の処女性は神秘的な力とまた動物として持って生まれた本能的な力が重ね合わせられてきました。いわゆる第六感の働きなど超常的な力をも担う月の女神、それがアルテミスなのです。
ルーブル美術館/狩りをするアルテミスもしくはダイアナ パブリックドメイン
左腕は復元されたもので、鹿も後から追加されたものとのことで、ここには狩猟犬のほうがふさわしいという意見も。一見左手で鹿の角を持っているように見えるが拡大してみるとわかるように何か弓の一部ではないかととされている。衣服とサンダルはドーリス人のもの。
他にも月との関連性を謳われている神々と言えば、ヘリオスの姉のセレーネー、大神ゼウスの正妻ヘラ、冥界の女神へカテなどがいて、それぞれが、満ち欠けする月の一面を司るとも言われます。
エジプト神話に見る月神イシス/Isis
エジプトの月神は女神イシス。太陽神オシリスの妹であり、妻でもあります。 子ホルスを抱くイシスがイエスを出す聖母マリアの原型であり、ウェイト版「女教皇」へと転じたことがうかがえます。
下)大英博物館所蔵 イシス像 600-30BC
Science Museum Group Collection© The Board of Trustees of the Science Museum 600-30BC
エジプト神イシスは地母神であり、肥沃をつかさどる女神。主神オシリスの妻。オシリスはイシスの兄弟により殺されたが、息子ホルスが報復し、彼が次の主神となった。